大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(あ)1463 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

被告人の上告趣意一は、原審において主張判断を経ていない事項を主張するもの

であつて上告適法の理由とならない。のみならず所論のa島b村に密輸出したとの

事実は第一、二審判決の認定しないところであるからこれを前提とする違憲、違法

の論旨は採用できない。

同二は、違憲をいうけれども実質は単なる量刑不当の主張をいでず刑訴四〇五条

の上告理由に当らない。〔憲法三六条にいわゆる「残虐な刑罰」とは不必要な精神

的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を意味し、事実審の裁判

所が普通の刑を法律において許された範囲内で量定した場合において、それが被告

人の側からみて過重の刑であるとしても、直ちにこれを「残虐な刑罰」ということ

はできないこと当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三二三号同二三年六月二三日

大法廷判決、集二巻七号七七七頁参照)とするところであり、そして原判決は被告

人に対し法律所定の普通の主刑と追徴を法律において許された範囲内で量定宣告し

たものであること明らかであるから原判決には所論のような違憲はない。〕

弁護人矢吹忠三の上告趣意第一点について。

所論は原判決後の改正関税法には原判決の適用した旧関税法一〇四条に当る規定

がないことを前提として原判決適用の法条は北緯二九度以南の南西諸島に適用がな

いというけれども、所論改正関税法一〇八条には「この法律の適用については政令

で定める本邦の地域は当分の間外国とみなす。」と規定し、右政令である関税法施

行令(昭和二九年六月一九日政令一五〇号)九四条には「法一〇八条(外国とみな

す地域)に規定する政令で定める本邦の地域は左の各号に掲げる地域とする。一硫

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黄鳥島及び伊平屋島並びに北緯二七度以南の南西諸島(大東諸島を含む)云々」と

規定している。そして右規定は旧関税法一〇四条に基く原判決適用の大蔵省令三六

号(この当時は北緯三〇度以南であつたが数次の改正で右政令と同様北緯二七度以

南となつている)とその軌を一にするものである。しかして、原判決の肯認した第

一審判決の認定した事実によれば入港したのは南西諸島c島d港であり同港が北緯

二六度一四分余のところに位することは顕著であるから、所論の前提は誤解独断に

出ているのみならず、右d港は所論改正法によつても今なお外国とみなされる地域

であることに変りはないから、原判決には擬律の錯誤なく、刑罰法令がないのに刑

罰を科したとの論旨並びにこれを前提とする違憲の主張は採用することができない。

同第二点について。

原判示c島d港は前点説示のとおり北緯二六度一四分余のところに位するので被

告人の本件犯行当時より所論刑罰法規の改正後の今日に至るまで終始外国とみなさ

れる地域であることに変りはないから、本件については所論「判決があつた後に刑

の廃止若しくは変更」があつたものということができない。論旨は採用できない。

同第三点について。

所論は単なる量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す

る。

昭和三一年九月一八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

裁判官 島 保

裁判官 小 林 俊 三

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裁判官河村又介は病気のため署名押印することができない。

裁判長裁判官 垂 水 克 己

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